木村香順作・行成書 (白檀)             
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木村香順作・行成書 (白檀木地)
木村香順(木村茂夫、木村順一、木村順二3名の銘)である事は先に述べましたが、父、茂夫氏が亡くなり、将棋作りは終焉してしまいます。
残された、長男順一氏、次男順二氏は、現在も職人として腕を研いておりますが、将棋作りには関わっておりません。
企画指導役であった父、茂夫氏亡き後に棋具作りを止めてしまったのは、ただ単に将棋駒や旗具を作って売る事、即ち、旗具生産業を目的としていた訳ではないからです。
木村香順作品は作成された製品一品一品には香順独自の作品への想いが込められています。
先人(豊島龍山)の残した書体の作品を作るにしても、元字母をそのままコピーして作るのではなく、書体の研究をして手を加え、香順なりの書体へと工夫しています。
例えば、当蒐集には菱湖書が2作品ありますが、同じ菱湖書でも同書体ではなく、全く異なる工夫部分が見られます(見つけてみて下さい)。
香順作品は、元字となる豊島字母帳の雰囲気を残しつつ、その上で創意工夫して香順のオリジナル性を残す、単にコピーする駒師ではないのです。

香順氏は、数種類のオリジナル書体の駒を残されており、本駒は、そのオリジナル書体の一つ藤原行成の書です。
私の知る限り、藤原行成書は山形の月山氏が作成された書体が最も多く作成されている書体かと思います。
が、しかし本駒の藤原行成書は月山氏の書体とは異なり、香順オリジナルの藤原行成の書で、父、茂夫氏が古書を集め将棋書体にした、木村香順のオリジナルな創作書体です。
しかも、駒木地に白檀を選び、行成書の、時代感表現にも徹底した拘りを見せた作品です。
古の貴族達が好んで用いたであろう香木の駒、こんな処にも、作品作りには妥協をせず、納得するまで世に製品を出さない姿勢が表れていますね。
職業駒師はより多くの製品を販売する為に駒を作り販売する事が目的ですが、香順はプロ中のプロの職人でありながら、作品の質に拘った仕事ぶりで、一般にはアマチュア駒師と呼ばれますが、むしろ、この姿勢こそがプロ中のプロの仕事であり、彼の作品の一品一品が美術品として評価され、多くのマニアに求められる所以なのです。

職人は上手に作れる事は当たり前、その上で作る製品(作品)に自身の魂を込めるのが本当の職人なのです。
木村香順作品には、職人香順の魂が籠っています。