木村香順作・宗歩好          
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木村香順作・宗歩好
木村香順は年に一作のみ納得のいく作品だけ世に送り出した駒師と言われております。

そんな木村香順だからこそ、生前のコーセー化粧品会長が連盟の名人駒は、使用頻度が激しく盛上が減り掘埋状態になっており、使用されないと聞き木村香順師に宗歩好の駒を制作依頼され、連盟に寄贈されました。
香順は連盟の名人駒を実見して字母紙に興しました。
名人駒は奥野一香の後期宗歩好でしたので、書体は奥野後期宗歩好の書体であり、現在も連盟のタイトル戦にはその駒が名人駒として使用されています。
しかし、この香順の宗歩好みの盛り上げは決して奥野一香の作風を模してはいませんが、それでも彼にしては本歌駒を一生懸命模倣している作風です、手先が器用で細心の注意を払って、ひたすら丁寧に盛り上げた結果ですから、どうしても香順風の作品となており、本駒の木地は薄目ながら藤巻模様で良い木地を用いていますが、杢目木地を優先した処理をしておらず香順らしい上品な仕上がりとなっており、駒師香順らしい良い味わいです。
木村親子は本業である指物師としても日本将棋連盟との関わりも強く、タイトル戦などに香順の駒台がよく使用されており、現代作家からもその作風は模倣され、多くの現代指物師からも目標であり尊敬されております。
既に物故者となって、昭和の名工である師の作品は大変に貴重となり、多くの指物師にとって師の遺作は珍重され手本となっておりますが、将棋駒についても同様に多くの駒師が手本とすべき作品ではないかと思います。
納得できるまで手間暇を惜しまず、ひたすら素朴で丁寧な作品作りを目指す姿勢こそ木村香順の魅力であり、残された彼の作品には品格が漂います。

木村香順の駒作品は現代模倣駒作者からアマチュア駒師と呼ばれますが、甚だ模倣作者の認識不足です。
木村香順の駒作品は、模倣していても、彼個人の駒書体作品に対する思いが込められているのです。
ただ単に意味もなく模倣だけを繰り返す現代作者の駒と木村香順の作品は一線を画す所以なのです。

駒作りを金儲けとせず、自身の作品として世に送り出す姿勢こそ、木村香順がプロ中のプロと評される所以なのです。
彼の作品は昭和最後の名匠として、後の世に名を遺すでしょう。